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東京地方裁判所 昭和63年(行ウ)18号 判決 1989年5月29日

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が昭和六〇年一〇月一一日付けでした別紙物件目録記載の土地に係る原告の特別土地保有税の納税義務を免除しない旨の処分を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  本件否認処分等の経緯

(一) 原告は、昭和五四年八月一六日、東京都豊島区目白三丁目三五四五番一一所在の宅地九九・八九平方メートル(以下「訴外土地」という。)を取得した後、昭和五九年一月二六日、新たに同区内の別紙物件目録記載の土地(面積合計一九三五・一七平方メートル。以下「本件土地」という。)を取得した結果、同区内に昭和六〇年一月一日現在で合計二〇三五・〇六平方メートルの土地を保有することになり、特別土地保有税の免税点を超えるに至ったので、地方税法(以下「法」という。)五八五条以下、七三七条二項、東京都都税条例四条の三に基づき、昭和六〇年五月三一日、被告に対し、訴外土地及び本件土地に係る特別土地保有税の申告書を提出し、同時に法六〇三条の二第二項に基づき、同条一項一号に該当するとして、同項による特別土地保有税の納税義務の免除の認定を申請したところ、被告は、昭和六〇年一〇月一一日付けで、訴外土地については同項一号に該当するものとして納税義務を免除するが、本件土地についてはこれに該当しないとして納税義務を免除しない旨の決定(以下「本件否認処分」という。)をし、同月一五日、その旨を原告に通知した。

(二) 原告は、昭和六〇年一二月一二日、本件否認処分を不服として東京都知事に対し審査請求をしたが、同知事は、昭和六二年一二月一八日付けで、審査請求を棄却する旨の裁決をし、右裁決は同月二四日に原告に送達された。

2  本件否認処分の違法性

(一) 本件土地取得及び建物建築工事の経緯

(1) 原告は、昭和五九年一月四日、取締役会において本件土地を原告本社新社屋建築用地として取得することを決定し、同月二六日、本件土地及び本件土地上の既存の建物(鉄筋コンクリート造地上六階地下一階建。以下「旧建物」という。)について、所有者の戸田建設株式会社(以下「戸田建設」という。)との間で、原告の新社屋建築工事を戸田建設に発注することを条件に売買契約を締結し、その引渡しを受けた。

(2) その後、原告は、同年二月から七月ころまでの期間を、旧建物の解体工事を行わせる業者の選定、その費用の見積、工期の決定や、新社屋新築についての設計プランの検討、近隣対策に費やし、同年七月二三日ころ、新社屋を鉄筋コンクリート造四階建(延床面積二六二一平方メートル)とすることに決定し、同年八月七日、資材搬入や廃材搬出のための車両の運行上、夏休み中で学童通学のないこの時期が適当として、結局新築工事と同じ戸田建設に発注して旧建物の解体工事に着工し、同年一一月二〇日、右解体工事が完了して同月二二日に引渡しを受けた。

(3) 他方、新社屋については、同年一一月一四日に実施設計のための敷地高低調査、同年一二月一九、二〇の両日にボーリングによる地質調査、昭和六〇年一月一七日から同月二四日にかけて右の地質調査に基づく実施設計がそれぞれ行われた後、原告は、同月下旬から二月上旬にかけて豊島区役所企画部都市計画課と開発行為にかかる事前協議を行い、同月一九日、建築確認申請をし、同年四月二日、建築確認を得た。

(4) その後、同年四月一一日の新築工事着工、同年六月一八日の基礎工事完了、同年九月二一日のコンクリート打ち工事終了、同年一〇月三一日の外壁タイル工事開始という経過を経て、同年一一月三〇日の設備、間仕切り工事の終了により新社屋は完成した。

(二) 特別土地保有税の免除制度

特別土地保有税課税の制度は、投機的な土地取引を抑制して地価の安定を図り、合わせて投機的に保有されている土地の放出を促す目的で、昭和四八年に創設されたものである。

しかし、その後土地取引活動や地価の動向が鎮静化し、国土利用計画法の施行を初めとする土地利用の規制に関する諸制度が整備されるなど特別土地保有税を取り巻く環境が変化したという状況を背景として、昭和五三年度の税制改正において新たに設けられたのが本条の納税義務の免除制度であり、これは、投機目的で所有されているものではないことが社会通念上相当程度に認められる土地については特別土地保有税の性格上税負担を求めることが適当ではないという趣旨から、その合理化を図るための措置として設けられたものである。

法六〇三条の二第一項は、同項一号の「事務所、店舗その他の建物又は構築物で、その構造、利用状況等が恒久的な利用に供される建物又は構築物に係る基準として政令で定める基準に適合するものの敷地の用に供する土地」に該当する土地について、市町村の土地利用計画に適合することを要件に納税義務を免除する旨定めているところ、右の「敷地の用に供する土地」の認定について、昭和五三年四月一日付け自治固第三八号自治省税務局長通達「恒久的な建物、施設等の用に供する土地に係る特別土地保有税の納税義務の免除の取扱いについて」(昭和五八年四月一日自治固第二二号による改正後のもの。以下「通達」という。)は、法所定の基準日(本件のように土地に対して課する特別土地保有税については一月一日)現在の一時的な現況のみによって免除の認定をすべきではなく、当該基準日を中心とする一定の期間における土地の利用状況を勘案して判断すべきものとしている。

(三) 本件の免除要件への該当性

本件土地取得及び建物建築工事の経緯は右(一)に述べたとおりであり、本件土地は当初から原告本社新社屋建築用地とする目的で取得されたもので、一連の経過からすれば、基準日現在において投機目的で所有されているものではないことが社会通念上明らかな場合であるから、法六〇三条の二第一項一号に該当するものとして特別土地保有税の納税義務の免除を認めるべきである。

なお、法六〇五条の二は特別の事情があるものについて特別土地保有税の減免をすることができる旨規定し、通達は土地の所有者の責めに帰することのできない事情により工事が遅延した場合について、特別の事情があるものとして減免事由に該当するとしているところ、本件では、右(一)に述べたとおり解体工事を学童の安全を考えて夏休みまで延期せざるを得ず、また、大規模建築であるために近隣対策や監督官庁との事前協議等に相当の日数を要したために建築確認が遅れ、新社屋建築工事の着工が遅延したのであるから、同条の要件にも該当するものといえる。

よって、原告は、本件否認処分の取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1(本件否認処分等の経緯)の(一)、(二)の事実は認める。

2  同2の(一)(本件土地取得及び建物建築工事の経緯)のうち、原告が昭和五九年一月二六日本件土地を取得したこと、昭和六〇年二月一九日建築確認申請をし、同年四月二日建築確認を得たことは認め、その余の事実は知らない。

同(二)(特別土地保有税の免除制度)のうち、法六〇三条の二が、投機目的で所有されているものではないことが社会通念上相当程度に認められる土地についての措置として設けられたとする部分は争い、その余は認める。

同(三)(本件の免除要件への該当性)は争う。

三  被告の主張

1  特別土地保有税の免除制度の趣旨

法六〇三条の二の特別土地保有税の免除制度は、従来は利用の有無を問わず一律に課税してきたのを改め、特別土地保有税の目的に照らし、既に最終的な需要に供されていて新たな宅地の供給には結び付かないと認められる土地について納税義務を免除することとしたものであるが、その制度上、当該土地上に建物等が存在し、かつ、その建物等が恒久的な利用に供されている事実が認められるか否かにより、納税義務の免除の措置の適用あるいは不適用の判断をなすべきこととされており、主観的な投機目的の有無が直ちに右の判断の基準となるものではない。換言すれば、当該土地が将来の売買に備え、仮の利用に供されているものか、最終的な需要に供されているものかの判断は甚だ困難であるため、外形的、客観的基準を導入し、基準日において恒久的な建物、構築物、その他の施設の用地として既に社会通念上相当の水準の利用がなされている土地に限って免除の対象とすることにしたものである。この点について、通達は、請求原因2の(二)の原告引用部分に引き続いて、既に建設に着手されており、かつ、その後の工事の進捗状況からみて恒久的な建物、施設等の用に供されることが確実であると認められる土地は、免除対象として差し支えないとしているが、これは、基準日現在において建物等の工事に全く着工していないような場合には、たとえ基準日後に建物等が建築され、利用に供されていたとしても、免除の対象とはならないという趣旨を含むものである。

2  本件の免除要件への不該当

本件土地は、基準日である昭和六〇年一月一日現在において更地であったばかりでなく、その前後それぞれ四〇日以上にわたって更地であったものであり、その間恒久的な建物は全く存在しておらず、着工にすら至っていなかったのであるから、免除の対象とはならないことは明らかである。

なお、本件において、基準日までに着工できなかったことが、原告の責めに帰すべからざる事情によるものとは認められないから、法六〇五条の二の適用は問題とならない。

四  原告の反論

1  法六〇三条の二第一項の免除の認定は特別土地保有税審議会の議を経て行うことになっているところ、これは各事案に応じた個別具体的な取扱いを予定したものであり、同項一号も単に「敷地の用に供する」と規定していて「現に供している」とは規定していないのであるから、被告主張のように形式的、画一的に基準日において建物の工事に着工していることを要件とするのは誤りである。

通達が、既に建設に着手されており、かつ、その後の工事の進捗状況からみて恒久的な建物、施設等の用に供されることが確実であると認められる土地は免除対象として差し支えないとしているのは、単に免除の認定ができる場合を例示したにすぎないと理解すべきであり、本件は、通達に即していえば、基準日現在においてはまだ建物の工事に着工していなかったものの、旧建物の解体工事や地質調査の着手により新社屋の建築工事に着工していたものというべきである。

2  被告主張のように基準日において着工されていることを免除認定の要件とすると、本件のような大規模な鉄筋建物は、建設工事に一年以上を必要とするのが通例であるから、基準日までに着工できないために法六〇三条の二第一項一号に該当することによる免除の措置を受けられない場合も生じることになり、不合理である。

3  本件のように土地に対して課する特別土地保有税の申告期限は、基準日の属する年の五月三一日であるところ、本来、基準日は申告期限であるべきであり、一月一日とされたのは課税の便宜のためにすぎないのであるから、基準日後は申告期限までの利用状況を勘案して免除の認定をすべきである。

第三  証拠<省略>

理由

一  本件否認処分等の経緯

請求原因1の(一)、(二)の事実は当事者間に争いがない。

二  本件土地取得及び建物建築工事の経緯

請求原因2の(一)のうち、原告が昭和五九年一月二六日本件土地を取得したこと、昭和六〇年二月一九日建築確認申請をし、同年四月二日建築確認を得たことについては、当事者間に争いがなく、その余の事実については、<証拠>に弁論の全趣旨を総合すれば、これを認めることができる。

三  原告の主張に対する判断

1  原告の主張

原告は、右二に判示した事実関係に基づき、本件土地は当初から原告本社新社屋建築用地とする目的で取得されたもので、一連の経過からすれば基準日現在において投機目的で所有されているものではないことが社会通念上明らかな場合であるから、法六〇三条の二第一項一号に該当するものとして特別土地保有税の納税義務の免除を認めるべきであると主張する。

原告の右主張は、つきつめていえば、同項の趣旨を、投機目的で所有されているものではないと認められる土地について特別土地保有税の納税義務を免除することとしたものと把握した上、同項を、基準日の前後の状況から判断して、基準日現在の所有者の意思が投機目的ではないことが認められる場合には、当該土地の基準日現在の外形的、客観的状態にかかわらず、納税義務を免除することとしていると理解しているものと解することができる。

2  当裁判所の判断

法六〇三条の二第一項は、特別土地保有税の免除の前提として、市町村長が同項各号に掲げる土地のいずれかに該当する旨の認定をすることを必要としているところ、同項一号は当該土地に存する建物又は構築物の構造、利用状況等が「恒久的な利用に供される建物又は構築物に係る基準」として政令で定める基準に適合することを要件とし、法施行令五四条の四七第一項一号は「その構造及び工法からみて仮設のものでないこと」を、同項二号は「その利用が相当の期間にわたると認められること」をその基準として定めており、また、法六〇三条の二第七項、五八六条四項は、右の認定が本件のように土地に対して課する特別土地保有税においては、法五九九条一項の規定により特別土地保有税を申告納付すべき日の属する年の一月一日(基準日)の現況によるものとしている。

右の各規定によれば、法は、基準日において恒久的な建物、構築物の用地として既に社会通念上相当の水準の利用がなされている土地に限り、これを法六〇三条の二第一項一号に該当するものとして特別土地保有税の納税義務を免除する対象としたものということができるべきである。

すなわち、法五八五条以下に規定する特別土地保有税は、土地保有に伴う費用の増大を通じて土地の投機的取得を抑制し、合わせて土地の供給を促進することを目的としたものであるが、投機目的で保有されている土地であるか否かの判断は困難であることなどから、当初は当該土地の利用の有無を問わず一律に課税されることになっていたものである。しかし、その後の土地取引に関する環境の変化に伴い、既に社会通念上相当程度の水準の利用がなされ、最終的な需要に供されていると認められるような土地についてまで特別土地保有税を課するのは適当ではないという考慮から、従前の土地利用の有無を問わない一律の課税を改め、昭和五三年の法改正で導入されたのが法六〇三条の二の納税義務の免除制度である。したがって、同制度の下においては、未利用の土地はもとより、将来の売買を見越して仮の利用に供されているにすぎない土地についても、納税義務の免除措置の対象とすべきでないことになるが、具体的な土地について、それが最終的な需要に供されているものであるか、将来の売買に備えた仮の利用に供されているにすぎないものであるかを判定することは、相当に困難を伴うものであることはいうまでもない。そこで、同項は、右の後者が免除措置の対象に紛れ込むことのないようにするため右の前者であることが明確なもののみを対象とすることとし、右の前者であることの判定につき外形的、客観的基準を導入したものであり、これを同項一号についてみれば、右のように、その地上に、構造、利用状況等が恒久的な利用に供されるものとして政令で定める基準に適合する建物又は構築物が存するか否かをもって、右の判定をなすべきこととしたものと解するのが相当である。

そうすると、同項一号に該当するか否かは、同号及び法六〇三条の二第七項、五八六条四項の規定するとおり、専ら、基準日において、当該土地に右の基準に適合する建物又は構築物が存するか否か、あるいは、少なくとも右の基準に適合する建物又は構築物が建築途上にあるか否かによって定まるべきものであって、右の基準に適合する建物又は構築物が基準日に現実に全く存しない場合においては、たとえ、このような建物又は構築物を建築する具体的な計画が進行中であり、所有者が投機目的で当該土地を所有するものではないとしても、それのみでは同項一号に該当するものとすることはできないというほかはない。

なお、通達が基準日現在の一時的な現況のみによって免除の認定をすべきではなく、当該基準日を中心とする一定の期間における土地の利用状況を勘案して判断すべきものとしていることは当事者間に争いがないが、これは、基準日現在の外形的事実だけによっては、それが法施行令五四条の四七第一項一号、二号の基準に適合するものであるか否かの判断がなお容易ではないことが少なくないことから、基準日前後の利用状況を基準日における外形的事実についての判断の補助的事実として考慮すべきことを述べたにとどまり、基準日において、当該土地が右の基準に適合する建物等の敷地に供されるものであると判断するための何らかの外形的事実が既に存在することを当然の前提とするものと解される。通達が右の部分に引き続いて、基準日現在において既に建設に着手されており、かつ、その後の工事の進捗状況からみて恒久的な建物、施設等の用に供されることが確実であると認められる土地は、免除対象として差しつかえないものとするのは、かかる場合に該当する一例を掲げた趣旨であると解されるのである。

3  原告の反論について

(一)  原告は、法六〇三条の二第四項が免除の認定を特別土地保有税審議会の議を経て行うこととしていて個別的認定を予定しているものと解されること、及び本条一項一号が単に「敷地の用に供する」と規定していて「現に供している」とは規定していないことを根拠に、基準日において全くの更地であっても免除の対象となり得ると主張する。

しかし、免除の認定が特別土地保有税審議会の議を経て行うこととされているのは、法六〇三条の二第一項各号所定の基準の該当性の認定を個別的に行わざるを得ないからであると解することができ、また、「敷地の用に供する」という文言も現に供しているとの趣旨と解するのが自然であって、いずれも原告の右主張の根拠となり得るものとはいえない。

(二)  次に、原告は、本件のような大規模な鉄筋建物は、当該土地の地域的条件や、地盤の状況などによって着工までに相当長期間を要するのが通例であるから、基準日までに着工できないために納税義務の免除が受けられないとするのは不合理であると主張する。

しかし、特別土地保有税は、昭和五三年の改正前は利用の有無を問わず一律に課税されることになっていたものであり、右改正により導入された法六〇三条の二の納税義務の免除制度も、その要件に該当する限度で土地利用の有無を考慮することにしたにすぎないから、仮に、大規模建築なるが故に原告主張のような事態が生じ得るとしても、やむを得ない結果というべきである。のみならず、少なくとも、本件においては、原告が、基準日の属する年の前年の一月に本件土地を取得しておきながら旧建物の解体工事に着手した同年八月までの約半年間これをそのまま放置していたのが新社屋建築着工の遅れにつながっているものというべきところ、近隣対策や学童通学への配慮があったとしても、それだけでは、この時期に約半年間も本件土地をそのまま放置せざるを得なかった理由としては不充分であり、他に右放置について合理的理由の存在を認めるに足る証拠はないから、原告の本件における建築が大規模建築なるが故に基準日までに着工できなかったものとは到底いい難い。

(三)  最後に、原告は、基準日は本来申告期限である五月三一日であるべきであり、一月一日とされているのは課税上の便宜にすぎないとして、基準日以後は申告期限までの状況も考慮すべきであると主張している。

しかし、基準日を申告期限に一致させることが望ましいとしても、法は前述のように基準日の現況によって認定するものと定めているのであるから、基準日後の状況は基準日現在の状況を推認させる補助的な事実として斟酌し得るにとどまるというべきであるところ、基準日において全くの更地である場合には、既にその点において法六〇三条の二第一項の免除の要件には該当しないのであるから、同項の適用の判断の上では基準日以後の状況は斟酌の余地はないというべきである。

4  本件の免除要件の該当性の有無

本件土地が、基準日である昭和六〇年一月一日現在において法六〇三条の二第一項一号所定の基準に適合する建物又は構築物の敷地の用に供されていた旨の(あるいは、少なくとも基準日において本件土地上に右基準に適合する建物又は構築物が建築中であった旨の)主張、立証はないから、本件土地は法六〇三条の二第一項一号に該当するとはいえず、納税義務を免除しないこととした本件否認処分に原告主張の違法はない。

なお、原告は、本件は、近隣対策や学童通学への配慮等原告の責めに帰すべからざる事由により建築確認が遅れ、工事の着工が遅延したとし、これを前提に法六〇五条の二の特別の事情があるとして特別土地保有税の減免をすべきであると主張する。しかし、原告が基準日の属する年の前年の一月から八月にかけての半年間本件土地上の旧建物の解体工事をせず、本件土地をそのまま放置していたことに合理的理由があると認め難いことは既に判示したとおりであるから、右半年間の経過は原告の責めに帰すべからざる事由によるものとはいえず、結局、工事の着工の遅延が原告の責めに帰すべからざる事由によるものであることについて立証がないに帰するから、原告の主張は、その前提を欠く。

四  結論

以上によれば、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 鈴木康之 裁判官 石原直樹 裁判官 佐藤道明)

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